【特集記事】クオリティソフトがドローン事業を始めた理由

(アナウンサードローン/クオリティソフト社にて)

クラウドサービスやソフトウェア製品の開発、販売業務を行なっているクオリティソフト社。そんな企業が開発したアナウンサードローンは、スピーカーを搭載したドローンを使用し、上空から多言語の音声を出力して対象となる方に必要となる「情報」を伝えるというもので、上空150メートルから、周囲300メートルの範囲に緊急アナウンスを届けることが可能です。

今回、DBC Newsを開設するにあたり、アナウンサードローンの説明と同時に、なぜクオリティソフトがドローン事業を始めることとなったのか、ドローンビジネス開発部部長の竹中が解説します。

可能性あふれるドローン事業

(竹中)当社のドローン事業は、注目度が高いドローン事業に参入することによって様々な業種の人々が当社に集まってくることへの期待と、ドローンというものの可能性の大きさへの期待で2017年4月に開始いたしました。

当初から想定していた事業内容としては、今後SIMカードが機体に搭載されることでIoT機器として扱われるドローンに対しての、当社のメイン事業であるセキュリティ対策ソフトウェアのノウハウを活かした機体管理とセキュリティ対策となりますが、まず始めたことは、和歌山の白浜本社にある広い敷地を活かしたスクール事業です。

今後、ドローン市場が活性化していくなかで、ドローンパイロットの不足が取り沙汰されており、広い敷地と社屋に併設された宿泊施設を活用し、スクール事業を開始することになったと同時に、我々自身がドローンに対する理解を深めることにもなりました。

ドローン・ビジネス・カレッジと名付けた弊社のスクールは、「集中して思いっきりドローンの飛行テクニックを学べる環境」と、「ファシリティの行き届いた宿泊施設での短期間合宿形式」という他にはない利点を提供できるということで支持を得、地方であるにもかかわらず、近畿一円や中部、関東からと、多くの方々に受講していただくようになりました。

その後、ドローンとソフトウェアを融合した事業の立ち上げを検討していたところ、本社所在地である和歌山県白浜町、すなわち自治体から防災無線に関する問い合わせを受けたのです。

白浜町では住民から防災無線に対して、
「何を話しているのかわかりにくい」
「音が大きくうるさい」
といった意見があったことや、町としても防災無線が災害によって使えなくなった場合にどうするか? といったことが問題となっていたのです。

すでにドローンビジネスを始めていた当社には、幸いにも様々な分野のビジネスパートナーが集まってきており、その中でこの白浜町の問題に対しては、ドローンに搭載してもクリアに音声が聞こえるスピーカーと、AIによって多言語アナウンスが可能なソフトウェアの二つを組み合わせると、解決できるのではないかと考えました。

そこで第一弾として着手したのがアナウンサードローンの開発だったのです。

アナウンサードローンの2つの特長

クオリティソフトが開発したアナウンサードローンは、スピーカーに圧電スピーカーという特殊なスピーカーを使用しています。距離による音圧減衰が小さいことから、ドローンに搭載した際に遠方まで飛ばすことにも適しています。

結果、ドローンのプロペラ音と放送音が干渉することなく、高度100m上空からでもクリアに伝えることが可能となりました。

また、「AIアナウンス機能」を合わせて搭載していますが、これは日本語をパソコン等で入力すると、指定した言語(2019年3月現在 28ヶ国語対応)に翻訳することができるというものです。これが音声データとして生成され、ドローン側で受信された後にスピーカーから指定された言語として発せられるというものです。

困難な開発の道のり

避難誘導中の消防士が死亡した事や防災無線が聞き取りづらいエリアが存在しているということを知り、問題解決できるかもしれない、と2017年10月から開発が始まりました。

「ドローン」と「AIアナウンス」と「スピーカー」を組み合わせて何ができるか? という中で、それぞれを単に足しただけでは製品として不完全でした。「1+1+1」が、すぐには「3」にならなかったのです。

「AIアナウンス」機能ですが、これはアナウンスする文章をパソコン等であらかじめ日本語で入力しておくと、AI翻訳により28カ国語(2019年3月現在)がドローンに送信され、指定した言語でアナウンスされるというものです。マイクから音声を出力することも可能で、臨機応変に避難方向などを指示できます。

こちらはあまり問題がなかったのですが、一番の問題はアナウンサー機能で出力した音声を、スピーカーから上空からはっきり聞こえるようにすることでした。これまでもプロペラ音の問題から、ドローンを用いた緊急アナウンスシステムはうまく動作できないことが多かったようです。

そこで注目したのが「圧電スピーカー」です。特性としては低音域が出ず、中高音域の音が出るため、パソコンなどのビープ音を鳴らすということが主な使い方でしたが、「人の声は中高音域帯だから、圧電スピーカーで聞こえるはずだ」と考え、音楽の再生などは考慮せず人の声を流すことを目的として採用しました。実際音楽を流すと曲の体をなしませんが、人の声だとはっきりと聞こえるんですね。

また、本当にクリアな音を出そうとすると仕組みが複雑になり、通信の方式も考えなくていけません。Wi-FiやBluetoothをつなげていると、すごく綺麗な音声にはなりますが遠距離での使用が苦手というデメリットもあるのです。

そこで採用したのが「簡易無線」で、これだと3キロ先でも通信が可能です。しかし音質が少し落ちるため、どうしたらはっきり聞けるようにできるか? という問題が発生しました。最終的には簡易デジタル無線でリアルタイムに再生データを送信する方式を採用しました。このようにひとつ解決すると新しい問題が出てくるという、モグラ叩きのような試行錯誤の日々だったのです。

さらに大型化も取り組みました。これにより出力の高いスピーカーや、防災用としてAED(自動体外式除細動器)や応急セットなどが搭載できるようになります。たとえば川の中洲に取り残された人がいて、しかもいつ水に飲み込まれるかも知れないという状況の際に、ドローンにライフジャケットなどの救命道具を搭載した状態で探せるようにしておくことで、救命の二度手間を防ぐことを考慮したものです。

利用方法・実証実験

(アナウンサードローン)

広がるアナウンサードローン活躍の場

災害時地震計測器で余震を感知したら自動で離陸し、避難警告を知らせる
監視密漁や違法侵入などに対して多言語で警告アナウンスを行う
害獣駆除害獣に効果的な鳴き声を発する
人命救助赤外線カメラによる体温感知機能を搭載して、被災地での人命救助や生存確認
観客誘導イベント会場での観客誘導

中でも防災活用は注目されており、クオリティソフトでは、白浜町や上富田町といった自治体と共同で防災実験を行なっています。

また、外国のお客様がいつもいらっしゃる、外国の人が多く働いている、といった観光地や大型工場といった施設では、電源がロストしてアナウンス自体ができないというような緊急時の際に、多言語で誘導を行なう必要があります。そういった事態の際にこのアナウンサードローンは威力を発揮するでしょう。

使用例としては、工場火災などが起きた場合、ドローンで状況把握するとともに、孤立した施設に「何人いますか? 手で示してください」という意思疎通を行なうことで、より状況把握の正確性が高まります。

利用用途は緊急時だけにとどまらず、イベント会場での誘導、密猟者や侵入者に多言語で警告を発するなど、様々な用途が考えられます。

操作・購入について

 (アナウンサードローン)

「アナウンサードローンは大型なので飛ばすのが怖い」と操作に不安を覚える人が多いこともあり、アナウンサードローン本体のみを販売するのではなく、「知識」「操縦」「メンテナンス」をセットにして販売することを考えており、価格は200万円〜、販売開始は2019年4月を予定しています。

おかげさまで、このアナウンサードローンは2018年の「Japan Drone 2018」Best of Japan Drone Awardにおいて、「最優秀賞」「総合オーディエンスアワード」を受賞しています。この名誉に甘んずることなく、今後は、ソフトウェアによるドローンのセキュリティ対策に取り組み、安心・安全なドローン環境が提供できるようなソリューション展開を考えています。


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